今年は台湾の総統・立法委員ダブル選挙にあわせて、1月初旬に研修を行いました。与野党の選挙集会を見学し、ファクトチェックを行っている団体でも話を聞きました。2日目は桃園市政府の協力で大渓などをめぐり、台湾の近現代史を学びました。参加ゼミ生の感想(★印)を紹介しつつ、研修内容を振り返ります。
猫空
研修がはじまる前日に、台北郊外の「猫空」という山にロープウェーで登り、食事をしました。とても綺麗な夜景を見ながら、美味しいお茶と台湾料理を満喫しました。
沃草(Watchout)
政府や政治を監督することを目標に活動し、ファクトチェックなどの力を入れているネットメディアを訪れ、洪国鈞編集長にお話を伺いました。
★台湾の若年層は選挙や政治への関心が非常に高いものであるとばかり思っていたのだが、この団体は、40代以下の投票率の低さに危機感を持っているようだった。台湾の投票制度では、戸籍のある地区でしか投票できなくなっているため、投票率の急激な向上は難しいだろうと感じた。
二二八記念館
台北和平公園にある二二八事件の記念館を見学しました。
★特に、母親とみられる女性とその周りで悲しむ子供の銅像は、事件の被害にあった犠牲者とその家族の深い悲しみと消えることのない傷を表しているように見え、印象に残った。また、記念館の外には、香港のデモで犠牲になった若者の記念碑が設置されていて、台湾の人々は香港のデモと二二八事件に似たものを感じているのかもしれないと思った。
国民党の選挙集会
新北市板橋第一運動場にて行われた、何志恩氏ら国民党立法委員候補の選挙集会を見学しました。同党総統候補の韓国瑜氏も応援演説に訪れました。
★多くの国民党支持者が中華民国の旗を振って韓国瑜氏を応援していた。年齢層は高齢の方がかなり多めという印象で、若者の姿はあまり見られなかった。韓国瑜氏の演説は、中国語を聞き取れない私にも熱意が伝わってくるほど、力強くて勢いがある演説だった。
民進党の選挙集会
台北市林森公園にて行われた呉怡農氏の選挙集会を見学した後、親北市新荘区陽光草坪へ移動し、 新北市と桃園市の全選挙区から立候補する立法委員候補の選挙集会を見学しました。蔡英文総統候補と頼清徳副総統候補も応援演説に訪れた、大型集会でした。
★まるでライブに来ているかと思うくらいの規模とボリュームだった。日本でもこのような盛り上がりのある選挙が行われたら、投票率も上がってくるのではないかと感じた。
桃園市新住民文化会館
桃園に住む外国人労働者など新住民にサービスや情報を提供するために作られた施設を見学しました。新住民からの相談内容は仕事、語学、妊娠などが多いそうです。
★新住民の文化的背景はそれぞれ違うので、情報の伝え方や対応も工夫しなければならない。制度的には新住民も他の市民と同じサービスを受けられるようになってきたが、見た目や言語の違いにより、差別は根強く存在している。新移民のイメージアップのためにも、文化交流は重要な役割を果たしている。
大溪木芸生態博物館
街並み自体が博物館というコンセプトで、清朝時代から続く邸宅や老街、日本統治時代の警察官舎、戦後の蔣介石の滞在施設などが点在する地域をひとまとまりの文化区として保存、整備し、歴史の記憶を伝えようとする「囲いのない博物館」です。左の写真は、日本統治時代に警察官の道場として建てられ、戦後は憲兵隊が利用していた「武徳殿」です。下の写真は清朝時代からの老街で、「街角館」として博物館に協力している長屋を見学し、ここで伝統木工芸を続ける方にお話を聞くこともできました。
★同じ小さな街の敷地に大渓の伝統文化や日本の統治時代の文化が建物として残っているのを見ることができてとても不思議な感覚を味わうことができた。昔ながらの中国の街並みに代々受け継がれてきた伝統文化は日本と近い国でありながらまったく異なったものだった。地域の伝統を守ろうとする桃園の人たちの姿勢はすばらしかった。われわれも、身近に伝えるべき伝統や滅びそうな伝統があればそれを守り、その良さを後世に広めていくべきだと改めて感じた。
桃園77藝文町
日本統治時代、台湾に駐在していた日本の警察の宿舎として使われていた建物をリノベーションした施設です。現在は外観や内装を残しつつ、カフェや展示場として利用されています。また、施設の名前は一般から名前を募集したもので、77というのはこの施設が在る地区名に由来しているそうです。
★日本が戦前、戦中と台湾を統治していたのは知っていたが、以前に個人旅行で台湾に来た際は日本の建造物を見ることはなかった。今回、桃園77藝文町で日本の木造家屋を見て、日本が台湾を統治していたことを、身を以て知ることができた。
桃園市政府 顏子傑秘書処処長訪問
桃園市が起業などを目指す若者のために提供している、公共のワーキング・スペースである「安東青創基地」で、桃園市政府の顏子傑秘書処処長にお話を伺いました。桃園市と日本の姉妹都市との協力、若者の政治参加など、学生から顔処長への質問は尽きることがなく、研修の締めくくりに相応しい対話の時間となりました。
★台湾の若者の政治参加についての話が印象に残った。台湾には青年事務局や青年諮問委員会というものが存在しており、若くして政治に参加できる環境が整っている。青年諮問委員会は政党とは一切関係がなく、学校の委員会の影響力を、学校を超えて社会へと及ぼせるようにしようとして考えられたものだそうだ。台湾には日本の小泉進次郎氏のように若いからと言ってもてはやされる政治家は珍しく、若い政治家が沢山いることも分かった。